お寺で1年間暮らしていた頃に集めた話や体験から、この線香は生まれました。住み始めて間もなく、周辺に長く暮らす方々から、かつてこのお寺には豊かな水が湧いていたという話を何度も聞きました。
今はその面影は薄れたものの、山肌から滴る水に手をかざすたび、この土地が重ねてきた時間に思いを馳せていました。振り返ると、お寺に住んでいる間、ずっと「水」のことを考えていたのかもしれません。
BRANCH INCENSEの第1作目「nono」は、「水」をテーマに制作しています。私が思い描いたのは、とろとろと流れる甘い水のイメージ。
その質感を表現するため、空気の中にゆっくりと、たぷたぷと漂う煙を意識して調香しました。自然物のみで作る線香は、ブレンドによって煙の質も変わります。そのため煙もまた、香りと同じく大切な要素として捉えています。また、お寺には無花果の木が植えられていたことから、主役には無花果を選びました。使用しているのは無花果の葉を粉砕したパウダーですが、そこから果実の持つ甘く潤いのある印象が立ち上がるように、樹脂や香木を組み合わせています。
白檀のやわらかく上品な甘さ、乳香の清涼感を重ねることで、無花果の気配と結びつく香りに仕上げました。また、お寺の山を思い起こすような緑のニュアンスを消しすぎないよう心がけました。「nono」という名前は、「のの様(仏様)」から名付けました。












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